精神科看護「まごころ草とばいきん草」

精神科看護「まごころ草とばいきん草」

精神科看護に関する自分なりの覚書

フィッシュ!実践篇 ぴちぴちオフィスの成功例一挙公開 感想

 

フィッシュ! 実践篇 ― ぴちぴちオフィスの成功例一挙公開

フィッシュ! 実践篇 ― ぴちぴちオフィスの成功例一挙公開

 

フィッシュ!哲学系記事第三弾。原著の続編です。

 

前作では架空のオフィスでの話でしたが、今回は通信会社、カーディーラー、病院、屋根葺き業者の4つの実話をまとめられたものになっています。

注目はやはり病院でしょう。

 

フィッシュ!哲学導入前後でこの病院はアンケートをとっていますが、

1999年9月から2000年5月の8ヶ月で、

チームワークがかけている25%→10%、おおいにある30%→75%

ポジティブな態度かけている25%→15%、おおいにある25%→75%

コミュニケーションかけている15%→20%、おおいにある33%→65%

協力かけている25%→10%、おおいにある25%→75%

満足度かけている25%→10%、おおいにある25%→75%

発言権欠けている33%→20%、おおいにある15%→65%

と、データ一部抽出ですが全てのポイントがほぼ上昇しています。

論文のように細かいデータがこの本に載っているわけではないのですが、フィッシュ!により大きく意識改革が出来たこと、また病院にとっても有益である事が示唆されます。

 

病院の章での印象的な段落としては、同じケアをするにしても相手に注意を向けてケアをするヘルパーのほうが、業務をこなすナースよりも患者の満足な表情を得られていたこと、フィッシュ!哲学なんてやる時間が無い!とコメントするナースに対し同僚が「どっちみちやらないといけない仕事には変わりない。仕事に対しどんな気持ちで向き合うかと言う話でしょ」と持ちかけ、議論になったということ、お魚バッチを職員同士で送りあい、時には患者や、関係ない喫茶店の店員にまで配っていたということがあげられます。

最後のお魚バッチいいですよね。ボーイスカウトの勲章みたい。集めて、配って、一目でわかって、元気が出そうなアイデアだなと個人的に思いました。

またフィッシュ!哲学導入のために勇気を出して、雰囲気の悪いオペ室の師長が購入したお魚ぬいぐるみが翌日に”誘拐”されたというのも、プロレス的ですが遊びと注目を集めるいい試みですよね。そういうの、面白いなって思います。

 

もちろん病院エピソード以外でも印象的な段落は多くありました。前作だけでは、フィッシュ!哲学の表面的な部分だけをさらっと触れるだけの印象で、今作も一緒に読まないと片手落ちになるのかなと思いました。

冒頭の通信会社のエピソードですが、基本的に通信会社の電話受けはクレーム的なものが多く、気のめいる仕事とかかれています。ネガティブな言葉も多く受け取り、仕事は気が重くなると。それって、精神看護の世界も近いものありますよね。

心が疲れ、病んでしまっている人は余裕がなく、時としてスタッフに暴言、暴力が出ることもあります。それにより私たちもまた心が辛くなってしまいます。

態度を選ぶことで、また仕事に遊びを取り入れることで、心の余裕を取り戻し、職員同士や患者さんとの”あいだ”が少しゆるくなり、良いかかわりが出来るようになるのではないでしょうか。

今後また著書を紹介する予定ですが、木村敏先生の”あいだ”理論、宮内倫也先生の”あわい”理論というものがありまして、私たち医療者側の心の余裕というのも、精神科ではとても大事。それと同時に、患者さんにもその心の余裕を持てるように、意識を向けてあげることも大事だと私は考えています。

フィッシュ!哲学で柔軟なかかわりが出来る職場環境となれば、患者さんへの関わりも向上し、もって病院の質の向上にもつながるのではないでしょうか。

 

次回、フィッシュ!おかわり、と第3作目の感想を述べようと思います。

その後にいくつか論文を横断的に紹介していこうかと思っています。

フィッシュ!鮮度100% ぴちぴちオフィスの作り方 感想

フィッシュ!―鮮度100%ぴちぴちオフィスのつくり方

フィッシュ!―鮮度100%ぴちぴちオフィスのつくり方

フィッシュ!哲学系記事の第二弾。原著です。
訳されたのが2000年と、割りと古めの本になります。その頃のペーパーバックと言えば、チーズはどこへ消えた?やザ・ゴール、金持ち父さん貧乏父さんなどがヒットしていましたね。懐かしい。そのため本の進み方が当時の流行りを踏襲してまして、少し古典的なビジネス書の進み方となっています。

内容としては、シングルマザーの主人公が昇給があるという理由だけでひどい職場に部署異動を受け入れます。あまりにひどく気が滅入りますが、ふとしたきっかけでパイクプレイスに行き、活気のある市場を目撃します。ああ、うちの職場もこう活気があれば・・・と見ていると、ロニーという店員が話しかけてきて・・・。

そこから、フィッシュ!哲学について導入されていくという流れです。

フィッシュ!哲学は、4つの考えが基本構造となっています。

・態度を選ぶ
・遊ぶ
・注意を向ける
・人を喜ばせる

この4つのシンプルな考えを"だれもが"理解し、実行していくことが活気のある職場にしていくという理屈になります。
一つずつ原著を参考にしながら説明していくと、

・態度を選ぶ

「仕事そのものを選べなくても、どんなふうに仕事をするかは自分で選べる」

看護師は特に、仕事が選べちゃう職種なんですが・・・。それでも、仕事をやめる選択には様々なデメリットがありますし、新しい職場に行っても同じ問題に直面する可能性も否定できません。

なので今、すぐに、時間やモノを使わず、変化できること。それが態度を選ぶということになります。
それはきちんと意識をして行えば、効果は絶大です。
WRAPふうに言えば、刺激に対して反射せず、反応をすることを意識するということで、リカバリーコンセプトの主体性ー責任ーにつながる考えになるといえるでしょう。

ちなみにですが、前回記事の本でフィッシュ!の取り組みとして、「態度を選びましょう、今日のメニューは?」とポスターを付けるという案。この本のp66が出典ですね。


・遊ぶ

「仕事自体が報酬になり、報酬を得るための方策ではなくなる」

フィッシュ!哲学の一番おいしい部分ですね。仕事=真面目、を取っ払おうという発想です。生きていて75%は仕事に関連する活動をしている、といわれているわけですから、その活動が真面目一辺倒では息苦しい。遊びを取り入れるのは自由な発想も受け入れられやすくなり、いいと思います。特に看護の世界では真面目も真面目すぎると思うので。(もちろん、真面目を必要とされる際にはいいんですよ。それだけしかないっていうのが・・・ね。)
もし、看護をしながら遊べれば、なんだかいいじゃありませんか?

ただ注意点があります。作中でも似たことが述べられてますが、それは、遊びが仲間内だけで終わらないようにするという点です。仲間内だけで遊んでおり、患者さんを巻き込んでいなければ、それは身勝手に遊んでるに過ぎません。遊びの目的は自分が楽しくするだけではないという点です。患者さんも巻き込みましょう。そこに一線は敷かなくていいということが、フィッシュ!の遊びと考えられます。

・注意を向ける

「注意を向けると、相手に思いやりを持つことができます」

看護師は患者に対して注意を向けるのは普段から行われており、まさに手と目を持って看る、看護の仕事の一つといえると思います。
しかしながら同僚に対してはどうでしょうか。注意向いてますか?
何も患者さんのように関わってという話ではありません。ほんの少しでも同僚に対しても注意が向くだけでずいぶん変わると思うんです。
「いまいいですか?」とあったら、注意を向ける。「ちょっと空気読んで話しかけてよ」とは言わず、聞く。それだけでも違うと思うんです。
フィッシュ!哲学を導入すれば、そのことを制度化でき、個人の努力に頼ることなくできますよね。注意を向けない同僚に対して「それフィッシュ!じゃないよね」と言える、ということは有効かなと思います。

・人を喜ばせる

「ベテラン社員のステファニーが、カウンターの後ろへいって魚をキャッチしてみないかと誘われたのだ。オフィスでは内気そうに見えるが、ステファニーはそれに応じた。最初の二ひきは受けそこない、見物客は喜び、同僚たちは面白がった。だが三回目にはみごと素手でキャッチし、万雷の拍手とやじと口笛を受けた。店員たちに楽しい体験をさせてもらったステファニーは、満足の面持ちだった。」

長い引用ですね。すみません。なかなか一言で私の受け取ったことを伝えにくくて。
これも遊ぶ、と注意を向ける、に大きく重なる部分がありますが、大事な点です。
楽しませるということは、遊ぶことと注意を向けることの2つが必須になります。
遊び心がなければただの奉仕になります。注意を向けていなければ、見当外れの"善意の押しつけ"になります。両輪がしっかりしてはじめて、人を喜ばせるにつながるのでしょう。

看護では、やはり同じく患者さんに対してはある程度得意ですよね。中には奉仕となっているシーンや見当外れになっていることもあるかもしれませんが、看護の基本といえると思います。
これも同じく、同僚に対してはどうでしょう?居て当然とか、下手すると足を引っ張るなよという目で見て接していませんか。それは、フィッシュ!ではないと思います。
お互い気持ちよく仕事をするためには、対等であることが前提です。人と人として認めあって、喜ばせたい気持ちを持ってお互いが関わると、良好な職場人間関係が構築されます。
現状、厚労省が出している資料によると、看護師の退職理由一位は出産・育児のため、二位は結婚、三位は他施設への興味、そして四位に人間関係とあります。(2011年、看護職員就業状況等実態調査結果、資料2より)
しかしながら、上位三位の裏に、人間関係が理由としては言わずとも要素が絡んでいることは、現職の方だと納得のいく話と思います。(人間関係が理由では、表向きの辞職理由にはできませんもんね。)
看護師が辞めるのも、就業継続するのも、人間関係が一番です。そこに直接てこ入れができるというのは偉大です。

・・・なかなか私の言葉の比率が高すぎる印象がありますが、そのような考えが、フィッシュ!哲学です。
本著はその考えをすっとわかりやすく、飲み込みやすく述べられています。
この考えは多くの一般企業に導入されていると言われています。
その波は遅れて看護の世界にも来ています。

フィッシュ!ってなに?と思ったら原著にあたるのが、一番軸がブレずにわかり良いと思います。
値段も1,200円ほどで安く、一時間もあれば読めるので、興味が出た方はまず原著どうでしょうか。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
フィッシュ哲学系記事はあと、実践編の本とおかわりの本を予定しています。
それだけで終わるとほんの感想となるだけであまり価値がないと思うので、追記としていくつか論文を横断的に紹介したいと思います。また最後に私の思った点をまとめて行こうかなと。

うちで導入するかどうかはおいといて、とりあえずきちんと考えるのはいいことかなと思うので、その予定としています。