精神看護「まごころ草とばいきん草」

精神看護に関する自分なりの覚書

精神科の薬がわかる本 第3版 / 予測して防ぐ抗精神病薬の「身体副作用」ーBeyond Dopamine Antagonism 感想

 

精神科の薬がわかる本 第3版

精神科の薬がわかる本 第3版

 

 

予測して防ぐ抗精神病薬の「身体副作用」―Beyond Dopamine Antagonism

予測して防ぐ抗精神病薬の「身体副作用」―Beyond Dopamine Antagonism

 

 今回は精神科の薬について。どちらも名著でぜひ手にとって欲しい本です。

私もまだ精神科の薬について人に説明できるほどの理解は出来ていないのですが・・・それでも、この本を読んでいると手ごたえを感じます。

残念ながら精神科は薬だけで全ては解決しません。しかしながら重要なファクターを占めているのも事実です。看護からも正しい知識を得て患者さんと関われば、教育的な支援に限らず情緒的な支援や環境的な支援も技術向上が見込めるのではないでしょうか。

 

この2冊について比較検討しながら話して行こうと思います。

 

1冊目の精神科の薬がわかる本 第3版は、精神科で使われる薬について網羅的に分かる本になっています。抗うつ薬睡眠薬抗不安薬抗精神病薬、抗てんかん薬、気分安定薬、抗躁薬など・・・。

各項目で丁寧に病気の仮説、薬の効果、作用機序、副作用、商品名と一般名および同ジャンル薬の薬剤プロフィールについて丁寧に描写されています。

基本的な解剖生理学の理解にあわせて内容が端的に書かれており、非常に便利です。反面文章が充分に練られており、読み解くのに少し頑張りが必要だなと私個人としては感じました。そのためぱっと見てぱっと理解しやすい本ではないというのが私の印象です。

 

私は精神科に行こうと思った時に、はじめに手にとった本の一つがこれでした。手に取った当時はあんまり分からない部分もあったのですが、辞書的に臨床で常に振り返り、学びを深めるのに最適な本だと感じています。

一般科と比較して精神科での薬は多岐に渡っており、しかもその作用は重複する部分も多いです。例えば睡眠薬は主な効果は眠気ですが、抗不安薬にも副効果として眠気があり、睡眠薬的に投与される場合もあります。NaSSAも眠気を誘う事から睡眠薬的に投与されることもあります。また、抗精神病薬の副効果に眠気や鎮静もあり・・・。と、なかなか入り乱れておりはっきりとした薬同士の線引きが難しいのが、精神科の特徴なのかなと思っています。

そのもやもやっとした部分にはっきりとした枠組みを提示してくれるのがこの本です。

ぜひこの本を用いて精神科領域を俯瞰する考え方を手に入れてみてはどうでしょうか。

 

2冊目は予測して防ぐ抗精神病薬の「身体副作用」―Beyond Dopamine Antagonismです。これは統合失調症圏での主軸である抗精神病薬に限定して書かれた本で、対象が絞られている分より深く理解が出来る本になっています。特にタイトルにあるとおり、身体副作用について100ページ以上割かれており、実例も豊富で非常に分かりやすい。比較図や表、グラフなど視覚的にも理解を深める工夫が沢山施されており、症例も多くあり非常に具体的。とてもとっつきやすい本に仕上がっています。

発売が2009年と、少し前の本ではあるのですが、2009年発売のクロザピンについても充分な量の薬剤プロフィールや研究結果の記載がありますし、それ以降発売のパリペリドンはリスペリドンの代謝産物でそれほどプロフィールに大きな差はありません。アセナピンは2016年発売の薬ですからそれほど多くの情報はまだありませんからね。充分に活用できる内容で、陳腐化はしてないといえると思います。新しい薬という感じのアリピプラゾールも実は2006年発売ですから、載ってます。

薬の受容体プロフィールも一覧表が付録でついていて、ぱっと見で効果・副作用が予想しやすくとらえ易い工夫がされています。プロフィールには主な受容体と関連する効果が記載されており、期待する効果である抗不安作用や睡眠の質の改善、情動の安定や副作用であるEPS、食欲増進、眠気、過鎮静、便秘、口渇、認知障害、起立性低血圧などの出やすさがすぐに分かります。

また、神経受容体レベルの副作用だけでなく、離脱、水中毒、悪性症候群代謝障害、痩せ、誤嚥性肺炎、認知症といった複雑な作用機序の副作用についても丁寧に説明がなされていて非常に、分かりやすいです。

本著を読み、常に副作用について念頭に入れておくことで普段の看護のかかわりや観察のレベルはぐんと上がると思いますし、おかしいな?と思った時に振り返りや考察、先生への提案がしやすくなります。

 

1冊目で薬の全体像を理解したら、本著で詳細について理解し、臨床に生かしていければ非常によいのではないでしょうか。2冊ともあわせて読んで欲しい名著です。