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精神看護「まごころ草とばいきん草」

精神看護に関する自分なりの覚書

新版こころ病む人を支えるコツ 田原明夫 感想

 

新版こころ病む人を支えるコツ

新版こころ病む人を支えるコツ

 

 「あなたは病気なのだから」「病気で入院しているのだから」「病院にはいろいろの人が入院してるのだから」「他の患者さんたちの迷惑になるから」「この病院ではこういう仕組みになっているのだから」。様々な理由で、小さな個人的な欲求も我慢させられてしまいます。時には、わがままだと叱られてしまうこともあります。

病院の看護師さんのなかには、そのようなつらさを分かってくれない人がいます。から、上記の引用文に続いていきます。

心のつらさとは、当然ながら目で見えません。また、人によって同じ出来事でも受け止め方や感じ方が違います。そして自然とその伝え方や対処方法も変わってきます。

画一的な取り決めだけで患者さんに対応してしまってはいけません。もちろん、その人の必要の為にあえて画一的な取り決めを行ってそう対処する場合もあります。けれども、基本的には、その人の思いに沿った形で小さな個人的な欲求は出来るように取り計らうのが良いのではないでしょうか、と筆者は一貫して述べています。

 

この本の著者は京大医学部出身で、患者さんの権利を主張し、守ってきた人でもあります。だから、出版社が「解放出版社」なんでしょうね。

ただ権利を主張しているだけではありません。

罪を犯した精神病者の責任のあり方については、難しい問題をはらんでいますが、原則として、法に触れることを知っていて罪を犯した場合には、罪の償いをする責任があると考えます。精神病者は犯罪を犯しやすいからと決めつけて、予防的に監禁しておこうとすることは、明らかな精神障害者差別ですが、罪を犯した人を良く調べもしないで、精神病者だからと言って、精神科病院に入れようとすることも差別だと考えます。

このように、社会人として当たり前の、法に照らし合わせて裁くことを原則として主張しています。当たり前ですよね。悪いと分かってやっていれば、明らかな犯罪であり責任能力を追及できます。

 

タイトルの「コツ」の部分ですが、基本に忠実に接することが述べられています。

例えば、話を親身になって聞く事を「受容的態度」なんて言いますが、その「受容」とはなんぞや、と提起しています。患者さんが言っていることを全て受け止め、望みのままに行動することは「許容」であり、「受容」ではないと述べています。

「受容」とは、何でも聞き入れることではなくて、しんどさを分かろうとすることが大切なのです。そして、「心配している」というキーワードを主軸に、患者さんと一緒に横断歩道を渡るかのように横に寄り添い、そっと手を差し伸べながら、話の腰を折らず、充分に聞いて、患者さんの表現を繰り返してお返ししながら聞いていくことこそが受容的態度に近づく、と述べています。

一文にまとめてしまいましたが、この基本的態度が「コツ」につながってくるとなっているわけです。

そしてその「コツ」ですが、孤軍奮闘、一人でやっていてはいけません。患者さんはもちろんの事、家族もだんだん人との関わりが減って行きがちです。ですから、家族会などに参加し、適度にガス抜きが出来る環境と人を得ることが何よりと述べられています。

 

著書は全体を通して、分かりやすく、表現をいくつか選択し、なるべく具体的に記述されています。ここの感想では省略しましたが、最後のほうでは明治から現代にかけてまでの精神科の歴史も分かりやすくまとめられています。手に取る機会があれば、ぜひ読んでもらえたらと思います。