精神科看護「まごころ草とばいきん草」

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精神科看護に関する自分なりの覚書

WRAPを始める! 感想

買ってすぐに読み終えてはいました。そのあとすぐ自分のWRAP作成に取り組んでて、感想を書くのを忘れてました。 

WRAP自体については、以前簡単にですが記事にしましたので省略します。

http://sakatie.hatenablog.com/entries/2016/09/29

 

WRAPを始める!―精神科看護師とのWRAP入門【リカバリーのキーコンセプトと元気に役立つ道具箱編】

WRAPを始める!―精神科看護師とのWRAP入門【リカバリーのキーコンセプトと元気に役立つ道具箱編】

 

 

 この本は著者のねてるさんも述べてますが、WRAPクラスに参加しているような、ライブ感があふれるものになっています。

そのため、”WRAPとは・・・”みたいな勉強の本というよりかは、

”こんな風に考えたり生活したりしてるんだ、みんなはどんな感じなのかな。”

というスタンスの本になります。それだけ念頭に入れて読んで貰えたらと思います。

 

結論から言うと、かなり買いの本と思います。

ただしあくまでもWRAP講義のライブと思ってもらったらいいと思います。これを読めば誰でもすぐにWRAPができる!というものではないです。WRAPを作るためには自分を見つめることや、時間をかけるなど、ちょっとシンドイ作業をしてもらわないといけません。冒頭を引用します。

「この本は、WRAPに関しての教科書や、マニュアル、ガイドラインの類ではない」

(中略)なので、決まった「形」はなく、<自分にあった形><自分によくフィットする>のがいちばんよい、その人の「WRAP」なのだと僕は思います。 ですから、ここに書かれていることは「自分にはどんなWRAPがよいだろうか?」と試行錯誤の末に手にした、その人が使っているWRAPなんだという風にとらえていただけると、よいと思います。

 と、こういう風な感じの本です。ただ、思うんですが、WRAPは一人で完結して作ることはできないと思います。どうしてもWRAPを持っている人と対話して精度を上げていく必要があるんじゃないかなと思います。そう言った際に身近に話せる相手がいない時にこの本は”人の代わりになる本”なんじゃないかと思います。とてもたくさんのダイアログが収録されてます。そこが、買いの点と思います。

 

この本は著者がWRAPを出会い、病気からのリカバリーをしていく様を背景にしつつ、「元気に役立つ道具箱」「リカバリーのキーコンセプトについて」「希望」「責任」「学ぶこと」「権利擁護」「サポート」と、WRAPの全容を丁寧に説明されています。また、単に説明するに留まらず、著者がWRAPを通じて出会った多くの人々との対話記録が、それぞれの項目ごとに載せられています。

 

各項目の説明もねてるさんが試行錯誤の末手に入れたものであり、かなり実質的です。現実的で、具体的です。決して抽象的なふわふわとしたことは書かれてません。きっとWRAP作成に悩んでいる人の手助けになると思います。

さらに、各項目ごとの対話がとても面白い。この本は当然ねてるさんの考え方が書かれているのですが、対話ではその人それぞれの考え方が垣間見えており、「WRAPって一人で完結して作れないんだな」ということがよくわかります。人と関わることの力、サポートの力、学ぶことの力がそのまま生の声で受け取ることが出来ます。

 

 WRAPのかなめは、5つのキーコンセプトだと思います。たくさんの道具箱を集める、それを分類し、使いやすいようにする。その点もとても大事ですし、しんどいときにはシステマティックに動くものがとても役に立つと思います。ただ、その道具箱が適切な方向を向いて動いてもらうためには、キーコンセプトがとても重要と言えます。

ただこのキーコンセプト、かなりぱっと見抽象的で、相当自分に引き寄せないと使えないと思います。

「希望」「責任」「学ぶこと」「権利擁護」「サポート」

この単語だけで適切にキーコンセプトを理解することは、相当困難です。とても一人じゃ難しい・・・。

だから、人に頼ればいいんです!(サポート/権利擁護) それを簡単に実現するのが、この本だと思います。

 

例えば「希望」を例にとってあげます。

少し、自分にとって希望ってなんだろうと考えつつ、読んでみてください。

<希望>。少し考えてみてください。自分の心はどこで希望を感じるのか。 ある人は、僕と同じように「つながっている」と感じるとき「自分が成長した」と思えるときに<希望>を感じるでしょう。「何か大きなものに守られている」と感じると<希望>を感じる人もいるでしょうし、「先の見通しが見えた!」ときに<希望>を感じる人もいるでしょう。「次の予定が決まっている」ことに<希望>を感じる人、「自分一人でもできる!」と思えた時に希望を感じる人、それぞれでしょう。(以下略、ほかにもたくさんの具体例が出てきます)

 自分の希望に近いものはありましたか?この本ではこのように、ねてるさんが今まで出会ってきたWRAPを参考に、たくさんのヒントが書いてあります。きっと、WRAP作成の際に役に立つと思います。

また、「希望」について、別の角度からまた引用します。ちょっと長くなりますが、省略しては美味しいところがなくなってしまうので、そのまま。ご容赦ください。

WRAPファシリテーターをはじめたばかりのころ、僕は(そして同期の仲間たちも)、「希望」と「夢や目標」の違いが判らず、それらを混ぜこぜに考えていました。つまり、「あなたの<希望>はなんですか?」と問いを立て、そこでは「仕事をすること」「恋愛をすること、結婚をすること」「病気が治ること」などがあがるのですが、続いて「タイムマシーンに乗って未来に行くこと」「恐竜を見ること」「室町時代に行くこと」などという発言も出てきました。僕にしても「ノーベル文学賞をとる。だけでなく、ノーベル物理学賞と平和賞もとって、三冠を戴く」というようなことを言っていた時期がありました。しかし、それは違っていました・・・。(中略)では「どう違うのですか?」と問われたならば、夢や目標は「達成したくて向かっていくもの。あるいは、ほしいと思うもの」。それに対して、希望は「そこに向かっていくというよりは、僕にとっては後ろにあって自分の背中を押してくれるもの。あるいは、胸の裡にあって、僕を力づけたり、ホッとさせたり、イキイキさせてくれるもの」と答えます。そして、「夢や目標は達成できない、たどりつけないと、もしかすると挫折体験になってしまうかもしれない。でも、<希望>は、胸の裡にあり、もって生まれた感覚なので、決してなくならない。もしかすると、自分で忘れてしまうことや、感度が落ちることはあるかもしれない。でも、もって生まれたもの、もともと備わっているものなので、決してなくなりはしない」と話します。(以下略)

 と、<希望>を一つとっても、これだけ濃厚に書かれています。さらに言うと、まだ希望の章ではより多くのことが書かれています。

このような著書ですから、ぜひWRAPに興味のある人は買って読んでみてはいかがでしょうか。

 

ちなみに2016年10月30日現在、私のWRAPはまだ作成途中です。道具箱はたくさんリストアップしたのですが、その分類とキーコンセプトはまだまだ・・・。

途中経過なんかも記事にしたら面白いかもしれませんね。機会があれば、載せれればと思います。