精神科看護「まごころ草とばいきん草」

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精神科看護に関する自分なりの覚書

栗原類 発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由 感想

 楽しみにしていた本が発売されました。

タイトル通り、栗原類氏が語る発達障害の本です。

 

発達障害の僕が 輝ける場所を みつけられた理由
 

 

栗原類」氏はADDでありながらもモデル・俳優として活躍している平成生まれの人です。

嫁から時々「あんたも栗原類に見習ってさ」と言われたりします。彼ほど自分をよく知って、自制心をもって希望を捨てずに頑張っている人はいないからです。

また、ノンバーバルコミュニケーションが苦手であると自覚しているため、言葉での伝え方が非常に丁寧で、いつも言葉選びに感動します。

 

著書のレビューはAmazonでのkamekurasan氏が書いている内容が感動的なほどよくできているので、そちらを読んでください。って、投げてしまっちゃだめですね。

 

栗原類氏の場合、母親が療育に熱心に関わって貰えていたことと、アメリカの先進的な発達障害に対する理解と唱道がとても良い影響があり、素晴らしい環境で育っていたという点はあります。

しかしながら日本的な「権利擁護」での唱道ではなくアメリカ的なAdvocateであったことが、彼の人生の軸を決めていったのだと思われます。

自分のことはなるべく自分でする。自分ができない範囲のこともきちんと見つめる。苦手なことは何か。できないことは何か。何なら頑張れるか。

そこから発展して、人に自分の特性を説明し続ける努力と、理解が得られなくても腐らない心の体力が、とても輝かしい点だと感じます。

はっきり言って普通の人でも難しいことだと思います。私なんかだと、人にちょっとでもわかってもらえないことがあると「まあ、無理だよな」と説明することを放棄してしまいますし、人から何か厳しいことを言われると腐ってしまいます。

また逆に何かいいことをしてもらったときは「普段頑張ってるから、まあね。」なんて調子に乗ってしまいます。栗原類氏は、「うれしいことを言ってもらったら自分が大事にされていると感じる。そして感謝の気持ちを伝える」と言っています。なかなか簡単にはできないことだと思います。特に家族など親密な仲になってくると・・・。

 

障害があるから、と腐らずに自分の人生を責任と主体性をもって、きちんと唱道していく姿は、同じ発達障害を持つ人にとってのロールモデルとなりえると思います。

 

障害があるからできないんだ。だから周りの人にわかってほしいんだ。配慮してほしいんだ。というものは、決して唱道ではないと思います。

それって、当事者だけでおいしくて、周りの人はしんどいですよね?

栗原類氏みたいに、障害があるからできないこともあるけれど、これこれはできるんだ。できないことろだけ、協力してほしいんだ。いろいろ対処は考えて、頑張るので。という姿勢だと、当事者も自分の人生に責任を持っていると感じますし、周りの人もできる点に関しては頼ることができるわけで、お互いいいですよね。

 

発達障害ってわからないのが当然だと思います。だから、当事者はわかってもらう努力と、障害とうまく付き合う方法を常に考える必要があります。それと同時に、周りも理解を示すよう、双方歩み寄りができれば理想的じゃないでしょうか。

 

さかなクンのお母さんもそうですが、栗原類のお母さんもまた、その子の個性を尊重して育ててくれている素晴らしいお母さんだと思います。ぜひ、すべてのお母さんにこの本は読んでほしい。こういう考え方も、伝えたいです。

 

本の最後にピースの又吉氏が書いていることを引用します。

僕も類くんも、勝手に決めてごめんやけど、センターポジションのいわゆる万能型の選手じゃないかもしれない。類くんはもしかして足が速くてめちゃくちゃ点が取れるフォワードかもしれない。僕は真ん中でみんなにパスしたりはできひんけど、とりあえず左サイドに張ってて、そこでボールを受けたらなんかできるとか。そういうイメージで、全体の中の一部分で「ここはやれます」っていうふうに思ってます。(中略)みんながみんな完璧にこなす必要はなくて、それぞれのできることを全力でやってりゃ、おもしろくなるんじゃないかって思ってて。そこは、それぞれ尊重してほしいなって。

 

「個性を尊重」じゃなくて、「それぞれのできることを全力で」という点が、さすが又吉氏だなと感じます。私も、精神科病棟の一看護師として、できることを全力で頑張りたいと思います。

 

・・・いくつか感想を書いていますが、なかなか思っていることをうまく表現できません。難しいですね。

この栗原類の本はぜひ、皆さんに読んでほしいと思ってますから、機会があればぜひ。病棟の本棚なんかにも入れてほしいなって思います。ほんとに。