精神科看護「まごころ草とばいきん草」

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精神科看護に関する自分なりの覚書

認知症合併の精神疾患患者さんとユマニチュード

受け持ち患者さんに、認知症を合併した患者さんがいます。

高齢で難聴もあり、幻聴もあり、性格は頑固で、なかなか対応困難な事例だなと感じていました。配薬をすると、口に含んで吐き出したり、コップの水をスタッフにかけたり。なかなか大変でした。

正直なところ、認知症患者さんに対するかかわり方というのは殆ど勉強できていない状態で、かかわり方をどうしたらいいのか、悩んでいました。

幸い当院ではCNSが在籍しており、相談した結果、「『ユマニチュード』という方法があるようですよ」と紹介してもらえました。

 

ユマニチュード入門

ユマニチュード入門

 

 

1979年にフランスのイブ・ジネスト、ロゼット・マレスコッティの両者によって開発された技法で、知覚・感覚・言語を包括したコミュニケーション法を軸にした技術だそうです。

ユマニチュードは、1)見つめること 2)話しかけること 3)触れること 4)立つこと の4つの柱により成り立っており、150ほどの技術に体系化され、誰でも身に着けることが出来る技法だそうです。

日本では、2012年、東京医療センターの本田美和子医師が日本に持ち込んでから広がっているようです。

私がCNSさんより頂いた資料は2014年の精神看護という雑誌の特集だったので、上記Amazonの本はまだ読めていないのですが・・・特集でかいつまんだ部分だけとりあえず使ってみたら、コミュニケーションが格段にとりやすくなったんです。

もちろん、何でもこちらの思い通りというわけではないのですが、薬が飲めそうなタイミングであったり、促しであったり、それ以前の日々のかかわりであったりと、気づけることが多かったです。

色々とまだ勉強をしないといけないことがあったり、やりかけの課題があったりと手まわらない状態ですが、ユマニチュードについても同時進行で進めいきたいなと思い、記事にしました。

 

精神看護Vol.17 no.6より引用します。

(前略)皆さんに質問をします。こういう人をみたことがありますか?私は、この状態になっている高齢者を何千人もみてきました。

拘束をされています。目を閉じたまま、ずっと身体をゆすり続けています。うめき声を挙げながら。私が何をいいたいか、お分かりだと思います。これは人間がユマニチュードの状態におかれなくなってしまった結果なのです。こういう方たちが、私たちが通っている病院や施設を埋め尽くしています。「それは老化だから」「これは病気だから」仕方がないといわれますが、私は、そこに落とし穴があると考えます。これは「最後の日まで、患者さんを人間として認識する」ことができなかった結果です。

・・・(中略)・・・

ユマニチュードは、文化を超えるものなのです。後天的に文化の影響を受ける以前に、人間は愛し、愛される為に、やさしくし、やさしくされるために生まれてくるのです。認知症が進むと、どのような国の人でも、その文化を超えて、人間として本能的な存在に戻っていきます。その結果、高齢の認知症患者さんは、日本の人であっても、自分から私にキスをしてくれます。自分から抱きしめてくれます。このことについて、患者さんから、私たちは学ぶべきです。(中略)これがユマニチュードの人間関係です。絆です。すばらしいチームの、すばらしい仕事によって、患者さんは人間としての絆を周囲と築くことが出来るのです。(後略)

 

 

ユマニチュードは、技法です。誰でも身につけることが出来るそうです。その奥には、人間への尊重と愛があります。「人権を尊重した関わり」というのは、例えばこういうものも一つの答えなのではないでしょうか?