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精神看護「まごころ草とばいきん草」

精神看護に関する自分なりの覚書

新版こころ病む人を支えるコツ 田原明夫 感想

 

新版こころ病む人を支えるコツ

新版こころ病む人を支えるコツ

 

 「あなたは病気なのだから」「病気で入院しているのだから」「病院にはいろいろの人が入院してるのだから」「他の患者さんたちの迷惑になるから」「この病院ではこういう仕組みになっているのだから」。様々な理由で、小さな個人的な欲求も我慢させられてしまいます。時には、わがままだと叱られてしまうこともあります。

病院の看護師さんのなかには、そのようなつらさを分かってくれない人がいます。から、上記の引用文に続いていきます。

心のつらさとは、当然ながら目で見えません。また、人によって同じ出来事でも受け止め方や感じ方が違います。そして自然とその伝え方や対処方法も変わってきます。

画一的な取り決めだけで患者さんに対応してしまってはいけません。もちろん、その人の必要の為にあえて画一的な取り決めを行ってそう対処する場合もあります。けれども、基本的には、その人の思いに沿った形で小さな個人的な欲求は出来るように取り計らうのが良いのではないでしょうか、と筆者は一貫して述べています。

 

この本の著者は京大医学部出身で、患者さんの権利を主張し、守ってきた人でもあります。だから、出版社が「解放出版社」なんでしょうね。

ただ権利を主張しているだけではありません。

罪を犯した精神病者の責任のあり方については、難しい問題をはらんでいますが、原則として、法に触れることを知っていて罪を犯した場合には、罪の償いをする責任があると考えます。精神病者は犯罪を犯しやすいからと決めつけて、予防的に監禁しておこうとすることは、明らかな精神障害者差別ですが、罪を犯した人を良く調べもしないで、精神病者だからと言って、精神科病院に入れようとすることも差別だと考えます。

このように、社会人として当たり前の、法に照らし合わせて裁くことを原則として主張しています。当たり前ですよね。悪いと分かってやっていれば、明らかな犯罪であり責任能力を追及できます。

 

タイトルの「コツ」の部分ですが、基本に忠実に接することが述べられています。

例えば、話を親身になって聞く事を「受容的態度」なんて言いますが、その「受容」とはなんぞや、と提起しています。患者さんが言っていることを全て受け止め、望みのままに行動することは「許容」であり、「受容」ではないと述べています。

「受容」とは、何でも聞き入れることではなくて、しんどさを分かろうとすることが大切なのです。そして、「心配している」というキーワードを主軸に、患者さんと一緒に横断歩道を渡るかのように横に寄り添い、そっと手を差し伸べながら、話の腰を折らず、充分に聞いて、患者さんの表現を繰り返してお返ししながら聞いていくことこそが受容的態度に近づく、と述べています。

一文にまとめてしまいましたが、この基本的態度が「コツ」につながってくるとなっているわけです。

そしてその「コツ」ですが、孤軍奮闘、一人でやっていてはいけません。患者さんはもちろんの事、家族もだんだん人との関わりが減って行きがちです。ですから、家族会などに参加し、適度にガス抜きが出来る環境と人を得ることが何よりと述べられています。

 

著書は全体を通して、分かりやすく、表現をいくつか選択し、なるべく具体的に記述されています。ここの感想では省略しましたが、最後のほうでは明治から現代にかけてまでの精神科の歴史も分かりやすくまとめられています。手に取る機会があれば、ぜひ読んでもらえたらと思います。

こころの医療 宅配便 高木俊介 感想

 

こころの医療 宅配便

こころの医療 宅配便

 

 

文藝春秋から出版されてますが、京都大学出身の精神科医である高木俊介医師の、ACT-Kについての本です。読み物として読んで面白いように書かれていますが、読み応えもあり面白い本でした。

 

ACT-Kとは、ざっくばらんに言うと精神科在宅ケアということになります。24時間体制で、往診と訪問看護もろもろで統合失調症の方の生活を支えていくという形になります。訪問看護と大きく違う点は、法で定められている訪問以上に訪問を行っている点で、無償の訪問があり得るということです。また、24時間体制でいつでも電話相談と、必要に応じて訪問を行うことがあるとあり、より利用者に密着したものとなっています。

ともすると、志の高いスタッフが多くなり、そうなるとバーンアウトが心配です。その対策として、1スタッフ10名までの受け持ちと訪問看護と比較すると少なめの人数配置で対応していますし、枠組みを外れる動きも電話相談一つで許されています。例えば本の中で紹介されているものですと、タケシさん(仮名)の初回訪問に行くと、地域の住民が意を決した様子で待ち構えています。スタッフのIさんは長に連絡し「次からタケシ君とこ行くとき、ご近所さんにも寄っていくようにしますわ。あの人ら、ガス抜きが必要ですねん。時間かかりますんでよろしく」と気軽に言って、そしてそれが出来るように調整してもらえます。

なんと柔軟な対応でしょう。病棟では想像できません。

 

そんな、ACT-Kの活動を上記の例のようにどんどこ紹介されている本で、非常に面白いです。また、個人的な話ですが舞台が京都市内のお話なので、やれ東大路がどうとか、川端がどうとか、少し学生時代を思い出せるような話題が多く、面白かったです。

 

さて、そんな文だけで終わらせてしまっては本当に感想になるので、もう少し述べて行きます。

 

高木医師は京都大学を出た後、精神障害者を地域に生活させることを目標に、先進的といわれる大阪府下の私立病院で10年働くなどしていきます。そのなかで従来の管理的な治療態度から、治療同盟的な発想に転換していきます。そして時代はバザリア法制定と、アメリカでの大規模精神病院の解体と迫っていきます。一方日本では、宇都宮病院でのリンチ事件、管理的な治療。ポチと呼ばれる患者の存在・・・。(これ、箕面ヶ岡病院事件の話で、実在だったんですね。驚きました。)

アメリカで、Assertive Community Treatmentの活動があると知り、日本でも導入できないかと考えます。2000年当時、ようやく精神科訪問診療と精神間訪問看護が動き出してきた時代。この診療報酬制度とNPO法人とのあわせ技で、ACT-Kが導入され、そして今全国規模に広がっていっています。

 

なぜ、高木医師は存在しなかった体制を立てていったんでしょうか。どんな思い、考えがあってそのような険しい道を進んだのでしょうか。

 

病院で勤務しながら分かったことは、日本の精神科医療費はもとから少ない。その少ない中なんとかやっていくには、人を少なく配置するほかない。そうすると結局のところ、管理的な業務を行うほかない。その結果、退院できず、平均300日以上の入院となり、30万床の病床数と膨れ上がった現実。

それと同時に、精神分裂病の人の人間に触れていきます。部屋中に花を飾り(一部は腐り異臭を放っている)、その中にすわり「シッシッシッシ・・・」と笑う老婆。「僕が世界を救う!」と筋骨隆々に鍛え上げた青年。歴代の教授と愛人関係であるという妄想を抱えつつも、どこか気品を感じさせる女性。

それぞれの人間の歴史、人生、背景を考えます。

病気=終わりではありません。数学者のジョン・ナッシュ氏は統合失調症を発症しましたが、ノーベル賞を受賞するまでに至っています。また、ロダンの弟子カミーユ・クローデル氏は被害妄想に振り回されながらもオリジナリティのある卓越した作品を作っています。

精神病を発症したからと言って、一生を病院で終える時代は終わった。

制度改革がはじまり、「制度の闇」がようやく転換期に差し掛かろうとしている。

もうこれ以上、閉じ込めてはいけないのだ。

その課題に筆者は立ち上がります。

 

元々統合失調症は、精神分裂病と呼ばれていました。その名称を変える運動を行ったのも、筆者です。クレペリンーブロイラー症候群、スキゾフレニア病、そして統合失調症と候補があげられ、投票によって選ばれました。統合失調症という名称も筆者が考案したものです。「決して精神が分裂しているわけではない」と。

便所をトイレと名称変更したからと言って、その匂いが変わるわけではない、とあります。確かに病気があるという事実はその通りです、ですが言葉にとらわれることはなくなります。

 

そして、ACT-K創設とつながり、記事冒頭の話となります。

 

かつてイギリスのジュリアン・ハッククレーという学者が、統合失調症の遺伝について次のような疑問を提出した。「遺伝する病気は、それが若いときに発症するものであれば結婚のチャンスが減るので、病気の数は減っていくはずだ。しかし、統合失調症はそのような病気であるのに、発病の数がまったく減らないのはどうしてなのか」

この問いに対して、日本を代表する統合失調症の治療者である中井久夫が次のような答えを出している。すなわち「統合失調症の遺伝的素質を持った人は、異性の獲得に有利な要素を持っているのではないか」というのである。(中井久雄著『分裂病と人類』東京大学出版会館、一九八二年)。

これはとても夢のある、魅力的な回答だ。統合失調症の遺伝子は、異性を惹きつけるような繊細さや神秘性といった、人びとの幸せにとって欠くことのできない要素と関連しているのかもしれない。

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京都新聞福祉事業部の記事でも、筆者とACT-Kについての文章がありますので、あわせてどうぞ。

この人と話そう/高木俊介さん

フィッシュ!哲学 文献紹介

フィッシュ!哲学系記事、第5弾。だいぶ長くなってしまってます。

今回は色々な文献や論文を見てみようの回です。

あんまり多くの文献を見つけることは出来ませんでしたが・・・。

 

雑誌 看護 2006年9月

イキイキと働ける職場環境づくり 「フィッシュ!哲学」の導入を試みて

東京慈恵会医科大学付属病院看護部長 大水美奈子

 前文を引用すると、

東京慈恵会医科大学付属病院では、2004年9月より、職場の活性化に効果を上げるといわれる「フィッシュ!哲学」の考え方を基にした、魅力的な職場環境づくりに取り組んでいる。本稿では、導入から現在に至るまでの活動内容を紹介する。

と、ここからフィッシュ!哲学が日本に広まりはじめました。

内容としては、

「教育改革はプログラムの見直しなどハード面の変更だけでは成立せず、運用するソフト面(人材)も同時に見直していくことで教育効果も上がると考えた。”仕事を愛するようになると、限りなく幸せになり、意義のある充実した毎日をすごすことができる”。一般に成人は、目覚めている時間の75%を仕事に関連した活動に費やしているからだ。」と、はじまり、フィッシュ哲学の大枠と実例を紹介しています。

結びに「フィッシュ導入前の2003年度と導入後の2005年度で、看護師職務満足度調査の結果に差が出ている。満足度にプラスの優位さが見られたのは7項目あり、うち4項目は人間関係に関するものであった。退職率にも良い変化が現れており、2003年度の16.8%に対して2005年度は12.5%であり、新人の定着率は97%であった。」と結果を報告しています。

フィッシュ哲学について雑誌に載った有意義な資料です。

 

 

雑誌 看護 2008.5月臨時増刊号

魅力ある職場環境をつくる アメリカ研修を基にフィッシュ!の導入を試みて

東京慈恵会医科大学付属病院看護部長 大水美奈子

2年後にも フィッシュ!増刊号として雑誌で特集されています。

大きな追加点としては、フィッシュ!おかわりの「見つける、実行する、コーチする」の概念も取り入れているという点が挙げられます。継続してフィッシュ哲学を行われていて、読んでいても気持ちの良い活動報告です。

 

雑誌 看護 2008.5月臨時増刊号

人事課から見たフィッシュ! フィッシュ!を活用し看護要員を確保

学校法人慈恵大学人事部人事課課長補佐 山口喜一

人事から見たフィッシュ!の意義が述べられている面白い記事です。あくまでも人事から見たらこんな感じに意味はあるな、という感じの観察記事であり、人事がフィッシュを導入したら、という話ではないのは注意。指摘にある「フィッシュが導入されているから、新しい環境で精神的に不安な看護師に良い。そのこともまた宣伝効果となる」という点が、印象的です。 

 

雑誌 看護 2008.5月臨時増刊号

フィッシュ!をキャリアラダー研修に導入 コミュニケーションの基本に位置づけ

東北大学病院副看護部長 門間典子 ほか

他院でもフィッシュが採用されたという記事です。教育担当の看護部長から筆頭にフィッシュ哲学が導入され、各師長がどのように反応しているかが感想によって述べられており面白い記事です。個人的にちょっといいな、と思ったのは「急患ツイテルね、ランキング(あなたが救世主)」という制度で、入院を受けた人がポイントを獲得し、何ポイントか溜まったら粗品(ジュースとか、希望のところに連休とか)をプレゼントしてもらえるというものです。しんどい入院受けにちょっとしたご褒美があると、私は単純なのでうれしく思いますね。 

 

2011年 第36回日本精神科看護学会 第9群40席

精神科療養病棟におけるスタッフの仕事に対するジレンマへの取り組み フィッシュ哲学導入で当病棟が泳ぎはじめた

神奈川県 財団法人積善会日向台病院 福本真也 川上裕子

4か月間、職業性ストレス簡易調査票を用いてフィッシュ導入前後の比較をしています。それと同時にカンファレンスを実施して振り返りを行っています。その2点を合わせて考察し、結論としていい意見と悪い意見が出たとまとめています。

おわりに、フィッシュ哲学を導入したばかりであり今後も継続したいと結んでいます。

 

2011年 第36回日本精神科看護学会 第9群41席

意欲をもてる職場づくりをめざして フィッシュ導入を試みる

岩手県 財団法人岩手済生医会岩手保養院 藤田真由美 佐々木聖 石杜淳

2007年12月から2009年7月までの約2年間、看護師の仕事意欲測定尺度の調査を前後に実施し、次いで自由記述式にフィッシュの感想を記載してもらうことで導入前後の比較をしています。考察にて仕事に対しやりがいを実感するよう変化してきたと述べています。結論としては仕事意欲向上に有効であることが示唆されたとあります。

 

2013年 第38回日本精神科看護学

第15群74席

フィッシュ哲学を基に職場を活性化する 精神科急性期治療病棟におけるストレス症状の把握と対策

島根県社会医療法人昌林会安来第一病院 池田智史 青戸結依子 田邉勝志 矢田敦子

3カ月間での調査ですが、フィッシュ導入前後の比較を精神科における看護者のストレス要因と、追加項目を入れて行っています。考察にて、「業務中にスタッフが抱いている思いの中には、コミュニケーション不足、協力体制への不十分さがあった。それは自分の意見をため込み、スタッフ間での緊張した関係に結びついていたのではないかと考える。そして、他者へのストレスや仕事に対してのモチベーション低下につながっていたのではないかと考える。」とあります。なるほどそうなのかなと思います。そうであるならば、フィッシュ哲学の導入は有効な手段と言えるでしょう。

 

雑誌 看護 2013年3月臨時増刊号

”フィッシュ!哲学”を取り入れた新人看護師教育

横須賀共済病院 野口和子

これは記事なのですが、 教育ラダーにフィッシュ哲学を盛り込んだという話です。今、ホームページを見たのですが、特に今はフィッシュと銘打っている項目はありませんね・・・。ただ、制服がいくつかから選べるなど、遊びの要素は残っているように感じます。

制度化を行うことで、法人全体で取り組みますよ、というメッセージが浸透し、各職員のフィッシュへの取り組みのバックアップにつながるだろうなと読んでいて感じます。最後の部分にフィッシュが形骸化しないよう仕掛けていくことが今後の課題とあります。哲学は今も生きているでしょうか。

 

それと最後に論文で、

産業ストレス研究19,389-400(2012)

[活動報告]看護職員におけるフィッシュ哲学の概念を基盤とした職場環境改善ー自由記述の質的分析を通してー

筑波大学大学院人間総合科学研究科 黒田梨絵 筑波大学医学医療系 三木明子

読みごたえがあり根拠や出典も潤沢に記載されており、勉強になります。良いです。

本研究では、フィッシュ対策の実施プロセスとして、研修会2週間前から各部署に書籍を看護部で購入し回覧。 外部講師によるフィッシュ哲学の概念に関する研修会を開催。ビデオ研修とその後参加者に対し各部署の師長からサンキューカードをサプライズで用意。その後、部署ごとにフィッシュ対策シートの使用方法を説明し導入開始。1か月後情報交換会を実施。その1か月後、師長と主任が集まり検討会を実施。3カ月間の経過を見た。

その後看護職員を対象に無記名式自記式質問紙調査の実施。基本属性のほか、良かった点と悪かった点を記載してもらう。その後自由記述分析は肯定的評価、否定的評価の2つに分けカテゴリ化の実施。スーパーバイズを受けながら2名の研究者間で7回の検討を行ってもらっている。

結果、人間関係の改善、モチベーション向上、前向きな思考・行動変化といった肯定的評価と、不明確な病院の方針、負担が増大する、不明瞭な成果といった否定的評価が表出した。

と、フィッシュ哲学導入による結果が明らかにされています。

フィッシュ哲学はなぜいいのか、どういった点がネックとなるのか、取り組みを提案された一般職員はどのような反応をするのかが明確となり、論文のレベルは活動報告となっていますが、有益なものとなっています。手にすることが出来るなら、読んで欲しいですね。

(黒田さん、2017年の今は健康科学大学助教になってるんですね)

 

全体を通して、一つ残念なのは、慈恵会以外の病院では、2017年現在フィッシュ!哲学が継続して導入されている様子が見受けられなかった点です。せっかくやって、効果があったと記事にしているのですから、そのまま続ければいいのに・・・。と、思います。しかしながら、フィッシュ!おかわりで記載されている通り、元に戻る引力はこうも強いんですね。文献を調べてて実感しました。

また、導入するための流れを構造化するという点は重要なのかなと感じました。フィッシュ哲学は自主的に発生するものという点がエンパワメント的であり大切ではあるのですが、それを制度として導入するなら、構造化は必要なことなのではないかと思います。その点、新人教育のラダーに導入するなど、仕組化することは有意義だと感じます。

黒田さんの論文でもあるように、不明確な病院の方針はそれだけでもやる気を損なうものです。やるなら、本腰を入れて、全体的に。

個人的に思いますが、看護部だけでこれを終わらせてしまうのはもったいなすぎます。病院とは他職種との連携が要ですし、看護師ってそもそも他職種との調整役にもなるはずです。看護部だけでフィッシュをやっていては、意味は薄いのでは・・・。だから、総務や医事課、連携室やOT、医師も巻き込んでやった方が、より効果的なんじゃないでしょうか。それにより、SBARの導入も容易になりますしね。

導入するための計画立案が重要そうですね。ぽっとで入れればぽっとで消えてしまいそう。

 

フィッシュ記事ばかりで埋まってしまうので、これでフィッシュ記事は終わりにします。

 

私個人の感想としては、フィッシュ哲学そのものはいいな、と思うんですが、導入するなら3年とか、5年とか、まとまった期間の実施をあらかじめ計画しておかないと付け焼刃なだけなのかなと思います。短期的には成功体験でも、長期的に見れば失敗体験になりそうです。

また、導入する際、その間同じ人がフィッシュ担当者となって率先する必要も感じます。担当者だけが頑張っていては意味もありませんから、病院組織全体としてそれを継続する仕組み作りも必要なんじゃないかなと考えました。

やるならしっかりガッツリ入れないと、しんどくて意味のないものになってしまいそうですね。

フィッシュ!おかわり-オフィスをもっとぴちぴちにする3つの秘訣 感想

 

フィッシュ!おかわり―オフィスをもっとぴちぴちにする3つの秘訣

フィッシュ!おかわり―オフィスをもっとぴちぴちにする3つの秘訣

 

 フィッシュ!哲学本第3弾で完結編。これで原著は終わりです。

 

本作はまた実在の体験などをもととしたフィクションストーリーで展開していきます。

設定は病院で、フィッシュ!哲学を導入したものの、導入者が部署異動となり、後任の師長が新しい人、という感じ。フィッシュ!哲学は導入され、魚の飾りつけなど変化はあり、旧人はそれに満足しているが新人は「なんだか溶け込めないぞ・・・」となっている様子。それに対し、「あの人はなじめない人だから、やめるだろう」と遠巻きに見てしまっている現場。・・・おお、なんだか既視感のある話だな。きっと多くの現場でこういうのってあるんでしょうね。

 

そんな感じのストーリー展開です。今回の話では、フィッシュ!哲学の原則である、

・遊ぶ

・人を喜ばせる

・注意を向ける

・態度を選ぶ

が既に浸透していることが前提の話になります。

 

これら、フィッシュ!哲学の導入によって一度は意識改革が成功します。しかしながら、人というのは水の低きに就くが如しで、楽なほうに流れてしまいます。フィッシュ!哲学導入の感動も冷めて、もとの病棟の雰囲気に戻りそうな様子・・・。

 

これを打破するのが、本作で新しく補足される3つの法則です。すなわち、

・見つける

・実現する

・コーチする

という概念です。一つずつ説明していきます。

 

・見つける

あらゆるビジョンの最も基本的な構成要素は、一人ひとりの”何か”である。”何か”とはビジョンを自分のものにすることである。ビジョンを持続させる力は、会話を通じて自分の”何か”を見つけることによって発生する。

んーと、カタカナと抽象的な用語が多く、小難しいんですが。病院の話で進めていきます。

病院って、そらもう沢山あるわけですが、どうやって就職先を選びましたか?

給与面、通勤面、環境面、色々と考えて選んだと思います。その中に、「理念」っていうのも大事なワードなんじゃないかなと私は考えてまして。

原則的に、病院というのは公益性が高いものですから、非営利法人になります。(美容整形という特殊ジャンルもあるんですが、省きます)非営利法人となると、基本的にはその理念に沿って病院は経営されるわけです。お金を目的としない。

その理念っていうのが、自分のしたいことと合致していれば、なかなかいい感じに仕事が出来る、っていうのが教科書的なお話になると思います。

 

ここの”見つける”というのは、そういった病院の理念を、自分のやりたいことに引き寄せて考えましょうという話になります。それによって仕事により自己実現が行えるという段取りを考えているわけですね。

”何か”とはビジョンを自分のものにすることである。とはつまり、理念から自分のやりたいことを引き寄せて実行していくこと。こうなりたいなー、こんな看護師になりたいなー、ということを実践していくことがビジョンということになります。

 

最後のビジョンを持続させる力は、会話を通じて自分の”何か”を見つけることによって発生する。とありますが、これは「こんな看護師になりなたいなー」と一人で考えて行動するだけでは不十分ということを意味しています。同僚と仕事の話や自分の話などをしていき、賛同を得たり、時には批判をもらったりすることで”何か”を向上させること、すなわち変化させ成長させていくことが大切だといっているのだと思います。

 

”見つける”とは、仕事で理念などから自分のしたいことを引っ張って実行し、人とそれについて話し合うことです。

 

・実現する

自分の”何か”がはっきりしたら、それを実現するチャンスはよりはっきりしてくる。そういったチャンスの事を、”ビジョン・チャンス”と呼ぶ。ビジョンを維持するエネルギーは、できる限りたくさんのビジョン・チャンスを生かすことによって生まれてくる。

あんまり用語は気にしなくて良いと思います。大切なのは、機会を大切に、アンテナを張って、どんどん挑戦していこうという点です。

やりたいことができる機会があったら、どんどんやっていきましょう。フィッシュ!哲学に基づいて、態度を選び、楽しく、相手を喜ばせ、注意を向けて行きましょうということなんじゃないかと思います。

 

”実現する”とは、理念に基づいて自分のやりたいことを楽しくどんどんやっていこう、ということです。

 

・コーチする

コーチングはお互いに与え合って、ビジョンを強く維持するための贈り物のようなものである。それが自分の仕事のやり方についてであろうと、チームワークのことについてであろうと、あらゆる方向にフィードバックされるようにしなければならない。コーチングはひとりよがりであってはならない。わたしたちはビジョンのためにコーチするのだ。

またカタカナと抽象的な言葉が多くややこしいのですが。p122あたりにわかりやすい説明が載っていまして。

 

タコ”と呼ばれるすし屋の新しいウェイターは、そのお店のフィッシュ!哲学などに共感して入職。”コーチしていい”といわれたため、色が変わったマグロをみて、新人ですが店長に「このマグロ新鮮じゃないんじゃないか」と提案。すると店長は「もしこのマグロが新鮮でないとわたしが思ったら、出さないわよ」とつっけんどんな態度で突き放してしまいます。しかしながら”タコ”は食い下がります。「コーチしたことに対してぶっきらぼうな対応をするのは、面接の時に話してくれた方針にはなかったような気がする」と”思い切って”いいました。すると店長は猛省し、コーチング精神そのものの話をしてくれたことに感謝し、私の態度は不適切だったと謝りました。

 

こんなことが現実に起こったらなんて素晴らしいでしょうね。コーチングはお互いなんでも言い合える環境を作りましょう、と提案し、それを受けれていく覚悟が必要だということを意味します。

この寓話の中では、結論としてマグロは新鮮だったとあります。事実がどうであれ、思った事を提案する勇気。またそれを聞いた時に感情のまま反論しない自制心。両方が試され、求められると述べられています。

フィッシュ!哲学を導入するだけではコーチングまでは行きません。あくまでも自分自身のことと、相手のことだけです。第三者的な目が入ることによって、自浄作用は高まり、より効果的で健全な職場環境の構築が可能になります。

 

”コーチする”とは、思った事を何でも提案できる事。またそれを受け入れる態度を常に作ることです。

 

本書のはじめのほうにある言葉を引用します。

新しい仕事のやり方が取り入れられた瞬間から、古いやり方へ戻ろうとする引力が発生する。最初は目新しさだけでも充分活力の源になるだろう。だが時間がたつにつれ、より強く持続性のある源を見つけなければならない。

とあります。まさにその通りですよね。

もし、フィッシュ!哲学を導入するとなるならば、こういった点にまで注目する必要があります。例えばサンキューカードやお魚バッチを導入したとしても、はじめはそれで充分活きると思いますが、一年後、三年後と時間が経って、導入の経緯を知らない新人がそれを見てどう思うでしょうか。どう感じるでしょうか。また、そういった外見的な部分だけに頼っているとするなら、それは本当の意味でのフィッシュ!哲学なのでしょうか。

飾り付けをすることはいいことですし、表彰することも素晴らしいと思います。しかしながら、そういった表面に出てくることではなく、もっと根っこのところからフィッシュ!哲学が浸透しないと意味がありません。挿し木をしたばかりの植物を引っこ抜くように簡単に終わってしまいます。

そうして簡単に終わってしまったフィッシュ!哲学を指差して「意味なかったね」とはなってしまっては、本当にもったいない。

やるならば、しっかりと、プランを練って、じっくりと。

 

これで原著の紹介は終わりです。次回、各地で導入されているフィッシュ!哲学を論文をもって追っかけてみます。

フィッシュ!実践篇 ぴちぴちオフィスの成功例一挙公開 感想

 

フィッシュ! 実践篇 ― ぴちぴちオフィスの成功例一挙公開

フィッシュ! 実践篇 ― ぴちぴちオフィスの成功例一挙公開

 

フィッシュ!哲学系記事第三弾。原著の続編です。

 

前作では架空のオフィスでの話でしたが、今回は通信会社、カーディーラー、病院、屋根葺き業者の4つの実話をまとめられたものになっています。

注目はやはり病院でしょう。

 

フィッシュ!哲学導入前後でこの病院はアンケートをとっていますが、

1999年9月から2000年5月の8ヶ月で、

チームワークがかけている25%→10%、おおいにある30%→75%

ポジティブな態度かけている25%→15%、おおいにある25%→75%

コミュニケーションかけている15%→20%、おおいにある33%→65%

協力かけている25%→10%、おおいにある25%→75%

満足度かけている25%→10%、おおいにある25%→75%

発言権欠けている33%→20%、おおいにある15%→65%

と、データ一部抽出ですが全てのポイントがほぼ上昇しています。

論文のように細かいデータがこの本に載っているわけではないのですが、フィッシュ!により大きく意識改革が出来たこと、また病院にとっても有益である事が示唆されます。

 

病院の章での印象的な段落としては、同じケアをするにしても相手に注意を向けてケアをするヘルパーのほうが、業務をこなすナースよりも患者の満足な表情を得られていたこと、フィッシュ!哲学なんてやる時間が無い!とコメントするナースに対し同僚が「どっちみちやらないといけない仕事には変わりない。仕事に対しどんな気持ちで向き合うかと言う話でしょ」と持ちかけ、議論になったということ、お魚バッチを職員同士で送りあい、時には患者や、関係ない喫茶店の店員にまで配っていたということがあげられます。

最後のお魚バッチいいですよね。ボーイスカウトの勲章みたい。集めて、配って、一目でわかって、元気が出そうなアイデアだなと個人的に思いました。

またフィッシュ!哲学導入のために勇気を出して、雰囲気の悪いオペ室の師長が購入したお魚ぬいぐるみが翌日に”誘拐”されたというのも、プロレス的ですが遊びと注目を集めるいい試みですよね。そういうの、面白いなって思います。

 

もちろん病院エピソード以外でも印象的な段落は多くありました。前作だけでは、フィッシュ!哲学の表面的な部分だけをさらっと触れるだけの印象で、今作も一緒に読まないと片手落ちになるのかなと思いました。

冒頭の通信会社のエピソードですが、基本的に通信会社の電話受けはクレーム的なものが多く、気のめいる仕事とかかれています。ネガティブな言葉も多く受け取り、仕事は気が重くなると。それって、精神看護の世界も近いものありますよね。

心が疲れ、病んでしまっている人は余裕がなく、時としてスタッフに暴言、暴力が出ることもあります。それにより私たちもまた心が辛くなってしまいます。

態度を選ぶことで、また仕事に遊びを取り入れることで、心の余裕を取り戻し、職員同士や患者さんとの”あいだ”が少しゆるくなり、良いかかわりが出来るようになるのではないでしょうか。

今後また著書を紹介する予定ですが、木村敏先生の”あいだ”理論、宮内倫也先生の”あわい”理論というものがありまして、私たち医療者側の心の余裕というのも、精神科ではとても大事。それと同時に、患者さんにもその心の余裕を持てるように、意識を向けてあげることも大事だと私は考えています。

フィッシュ!哲学で柔軟なかかわりが出来る職場環境となれば、患者さんへの関わりも向上し、もって病院の質の向上にもつながるのではないでしょうか。

 

次回、フィッシュ!おかわり、と第3作目の感想を述べようと思います。

その後にいくつか論文を横断的に紹介していこうかと思っています。

フィッシュ!鮮度100% ぴちぴちオフィスの作り方 感想

フィッシュ!―鮮度100%ぴちぴちオフィスのつくり方

フィッシュ!―鮮度100%ぴちぴちオフィスのつくり方

フィッシュ!哲学系記事の第二弾。原著です。
訳されたのが2000年と、割りと古めの本になります。その頃のペーパーバックと言えば、チーズはどこへ消えた?やザ・ゴール、金持ち父さん貧乏父さんなどがヒットしていましたね。懐かしい。そのため本の進み方が当時の流行りを踏襲してまして、少し古典的なビジネス書の進み方となっています。

内容としては、シングルマザーの主人公が昇給があるという理由だけでひどい職場に部署異動を受け入れます。あまりにひどく気が滅入りますが、ふとしたきっかけでパイクプレイスに行き、活気のある市場を目撃します。ああ、うちの職場もこう活気があれば・・・と見ていると、ロニーという店員が話しかけてきて・・・。

そこから、フィッシュ!哲学について導入されていくという流れです。

フィッシュ!哲学は、4つの考えが基本構造となっています。

・態度を選ぶ
・遊ぶ
・注意を向ける
・人を喜ばせる

この4つのシンプルな考えを"だれもが"理解し、実行していくことが活気のある職場にしていくという理屈になります。
一つずつ原著を参考にしながら説明していくと、

・態度を選ぶ

「仕事そのものを選べなくても、どんなふうに仕事をするかは自分で選べる」

看護師は特に、仕事が選べちゃう職種なんですが・・・。それでも、仕事をやめる選択には様々なデメリットがありますし、新しい職場に行っても同じ問題に直面する可能性も否定できません。

なので今、すぐに、時間やモノを使わず、変化できること。それが態度を選ぶということになります。
それはきちんと意識をして行えば、効果は絶大です。
WRAPふうに言えば、刺激に対して反射せず、反応をすることを意識するということで、リカバリーコンセプトの主体性ー責任ーにつながる考えになるといえるでしょう。

ちなみにですが、前回記事の本でフィッシュ!の取り組みとして、「態度を選びましょう、今日のメニューは?」とポスターを付けるという案。この本のp66が出典ですね。


・遊ぶ

「仕事自体が報酬になり、報酬を得るための方策ではなくなる」

フィッシュ!哲学の一番おいしい部分ですね。仕事=真面目、を取っ払おうという発想です。生きていて75%は仕事に関連する活動をしている、といわれているわけですから、その活動が真面目一辺倒では息苦しい。遊びを取り入れるのは自由な発想も受け入れられやすくなり、いいと思います。特に看護の世界では真面目も真面目すぎると思うので。(もちろん、真面目を必要とされる際にはいいんですよ。それだけしかないっていうのが・・・ね。)
もし、看護をしながら遊べれば、なんだかいいじゃありませんか?

ただ注意点があります。作中でも似たことが述べられてますが、それは、遊びが仲間内だけで終わらないようにするという点です。仲間内だけで遊んでおり、患者さんを巻き込んでいなければ、それは身勝手に遊んでるに過ぎません。遊びの目的は自分が楽しくするだけではないという点です。患者さんも巻き込みましょう。そこに一線は敷かなくていいということが、フィッシュ!の遊びと考えられます。

・注意を向ける

「注意を向けると、相手に思いやりを持つことができます」

看護師は患者に対して注意を向けるのは普段から行われており、まさに手と目を持って看る、看護の仕事の一つといえると思います。
しかしながら同僚に対してはどうでしょうか。注意向いてますか?
何も患者さんのように関わってという話ではありません。ほんの少しでも同僚に対しても注意が向くだけでずいぶん変わると思うんです。
「いまいいですか?」とあったら、注意を向ける。「ちょっと空気読んで話しかけてよ」とは言わず、聞く。それだけでも違うと思うんです。
フィッシュ!哲学を導入すれば、そのことを制度化でき、個人の努力に頼ることなくできますよね。注意を向けない同僚に対して「それフィッシュ!じゃないよね」と言える、ということは有効かなと思います。

・人を喜ばせる

「ベテラン社員のステファニーが、カウンターの後ろへいって魚をキャッチしてみないかと誘われたのだ。オフィスでは内気そうに見えるが、ステファニーはそれに応じた。最初の二ひきは受けそこない、見物客は喜び、同僚たちは面白がった。だが三回目にはみごと素手でキャッチし、万雷の拍手とやじと口笛を受けた。店員たちに楽しい体験をさせてもらったステファニーは、満足の面持ちだった。」

長い引用ですね。すみません。なかなか一言で私の受け取ったことを伝えにくくて。
これも遊ぶ、と注意を向ける、に大きく重なる部分がありますが、大事な点です。
楽しませるということは、遊ぶことと注意を向けることの2つが必須になります。
遊び心がなければただの奉仕になります。注意を向けていなければ、見当外れの"善意の押しつけ"になります。両輪がしっかりしてはじめて、人を喜ばせるにつながるのでしょう。

看護では、やはり同じく患者さんに対してはある程度得意ですよね。中には奉仕となっているシーンや見当外れになっていることもあるかもしれませんが、看護の基本といえると思います。
これも同じく、同僚に対してはどうでしょう?居て当然とか、下手すると足を引っ張るなよという目で見て接していませんか。それは、フィッシュ!ではないと思います。
お互い気持ちよく仕事をするためには、対等であることが前提です。人と人として認めあって、喜ばせたい気持ちを持ってお互いが関わると、良好な職場人間関係が構築されます。
現状、厚労省が出している資料によると、看護師の退職理由一位は出産・育児のため、二位は結婚、三位は他施設への興味、そして四位に人間関係とあります。(2011年、看護職員就業状況等実態調査結果、資料2より)
しかしながら、上位三位の裏に、人間関係が理由としては言わずとも要素が絡んでいることは、現職の方だと納得のいく話と思います。(人間関係が理由では、表向きの辞職理由にはできませんもんね。)
看護師が辞めるのも、就業継続するのも、人間関係が一番です。そこに直接てこ入れができるというのは偉大です。

・・・なかなか私の言葉の比率が高すぎる印象がありますが、そのような考えが、フィッシュ!哲学です。
本著はその考えをすっとわかりやすく、飲み込みやすく述べられています。
この考えは多くの一般企業に導入されていると言われています。
その波は遅れて看護の世界にも来ています。

フィッシュ!ってなに?と思ったら原著にあたるのが、一番軸がブレずにわかり良いと思います。
値段も1,200円ほどで安く、一時間もあれば読めるので、興味が出た方はまず原著どうでしょうか。

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フィッシュ哲学系記事はあと、実践編の本とおかわりの本を予定しています。
それだけで終わるとほんの感想となるだけであまり価値がないと思うので、追記としていくつか論文を横断的に紹介したいと思います。また最後に私の思った点をまとめて行こうかなと。

うちで導入するかどうかはおいといて、とりあえずきちんと考えるのはいいことかなと思うので、その予定としています。

フィッシュ!の導入と実践ガイド 感想

いまさらながら、看護の世界で一時期ブームになっていたフィッシュ!の慈恵会の本を読みました。
本としては軽い読み物で、慈恵会にフィッシュ!が取り入れられる経緯と、副部長や師長、院長など各立場の人のコメントが載せられているほどのものです。
なので一時間もあれば十分読めるものでした。

導入と実践ガイドと銘打ってますが、すこしそれは言いすぎかなと思います。もちろん先駆者の本として出典元になるという価値もありますし、有意義なことなのですが、即使えるかというと・・・それぞれの立場からの思惑が散見され、言い方を選べばナラティブな本だなという感じです。

アマゾンで買いまして。発売されてから随分経ったので何刷かされてるかと思いましたが一刷でした。
ブームにはなりましたが、不思議な現象ですね。みんな原著にあたったのでしょうか。それとも、慈恵会の講義をもとに進めたのでしょうか。

良い点としては、フィッシュ!哲学を周知することができた点、各役職の思惑が読めた点、実際の行動化としてのフィッシュ!の様子などがしれた点が挙げられると思います。

反対に悪い点としては、フィッシュ!があくまでも管理者目線であること、活動に倫理と道徳を考えているのかどうか疑問が出たこと、自主性の尊重と唄いつつも非協力者への配慮のないことが挙げられると思います。

特に個人的に嫌だなあ、と思ったフィッシュ!活動として、新人看護師の親に対し、仕事近況を事細かに綴った手紙を出したという活動がありました。
あくまでも個人的に嫌だなと思っているだけで、その新人看護師と職場でラポールが取れていれば構わないのですが。
世の中には親が実害のある場合もあると思うんですが、配慮はあったのでしょうか。→毒親という概念の配慮が心配です。

表面的にフィッシュ!哲学を導入するとなると、こういった善意の押し付けが横行するのではないかと危惧してしまいます。

また、季節に伴った病棟の飾り付けというのも、これが自然とやりたいという気持ちからやっているのであればいいのですが、半ば義務感でやっていたり、そういうものだから、と習慣でやっていては単なる業務に成り下がるのではないかと思います。
あくまでも自主的に、やりたいから、そしてそれがフィッシュ!哲学に則っていて快の行動であるから意味があるのではないかなと思います。

批判ばかりではいけませんね。
実際のところ、私の前の職場でも導入されまして。
ぶっちゃけ鼻から形骸化した感じでした。ただサンキューカード制度はわりと回っていて、ありがとうを見える化してボードに貼っていくことは、手間もほとんどかかりませんし、自主的にすることですから結構職場でも評判が良かったです。
ただやはりフィッシュ!哲学自体をきちんと伝えられずの導入だったので、フィッシュ!=サンキューカード、となっていました。

今の職場ではまだ導入されてません。精神科ならではかもしれませんが、一般と比較してわりと普通にフィッシュ!哲学的な考えははじめからあったように思います。
臨機応変に対応しますし、よい患者対応のためには自分自身もよい精神状態である必要がある、と言う考えから、なんでも話しやすい、頼りやすい環境にあると思います。
ただそれを自然発生的にそのままにすると消滅する可能性もありますから、技法として、ベースアップとして導入することも無意味ではないのかなともお持っています。

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2017年になりました。去年は一般科を経由して、やっと目的の精神科看護師になることができました。私の看護の芽生えはこの科にありましたから、15年来の目標達成です。業務もある程度の水準には来たと思います。
学びをブログに記載し、表現することも始めることができました。

今年は去年以上に学びを深め、それをブログなどにも表現し、自分の中だけに留めないようにしたいと思います。
また、2年目の精神看護師として恥じない活躍をしたいと思います。

今年もよろしくお願いいたします。